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2012年6月27日水曜日

中国農村。〜日本人口の5倍以上いる農民の暮らしとは?〜





今年の春節のときに、山東省の烟台の近くの農村で5日間過ごしました。
その体験についてのエントリーはこちらです。

とにかく、真新しいことばかりな刺激的な5日間だった。
人生で初めて5日間シャワーに入らない経験をした。


それまで杭州、上海、大連と比較的大きな都市しか見てこなかった僕にとっては、全く違う国の環境を見ているような別の世界だった。

中国ではこういう言葉がある。
中国を理解するなら農村を理解しなければならない

今年始めに、「都市人口が農村上回る」というニュースがあった。
それまではずっと農村人口が上回っていて、年々農村から都市に人口が流入した結果こうなった。今でも、人口13億人といわれる中国人の約半分が農民である。

その数、6億5000万人以上。農民だけで、日本人口の5倍以上。


中国ではちゃんとした人口統計がないから、実際にはもっといると言われている。

ものすごい数字。それに都市面積と農地面積の割合出したら、中国の大部分が農地ってことになるはず。

これが、中国社会を観察するとき、農村抜きでは考えられない理由。

僕も農村について全く理解してなかったので、友達にいくつか質問しました。


農村といっても、中国は広大で色んな農村があり、これは“烟台市にある一つの農村”での話です。それでも烟台は沿岸地域に属するので比較的裕福で、内陸の農村とはかなりの差異がある。他の農村にも共通する部分も異なる部分もあると思う。



Q,農民は、春節の時にしか肉類を食べないのか?

ある本で読んだ話。肉類は贅沢品だから、春節とか国慶節とかめでたい時にしか食べない。

友達の家に行った時も、食べきれない量の肉料理が出されて、「農村ではめったに食べられない肉をいつでも食べられる俺が食べるなんて,,,」と申し訳なく思ってました。



A,彼の住んでる地域では「春節以外全く食べないわけではない」とのこと。週1ぐらいで食べるそうです。
ただ、昔の時代は特に肉が贅沢品だったから、そのなごりで「肉を食べなくても満足する」のが普通だそうです。


(春節の時に作ってもらった昼ご飯!これがまたやみつきになる味)






Q,農民の大体の一年の流れ

A,農作で一番忙しい時期は、「4月と10月」。土地を耕して野菜や果物を植える時期と、収穫の時期です。
冬は農作ができないから、「休憩」の季節だそうです。
一日中テレビを見ながらお茶と果物とお菓子を食べればそれで幸せ、そういう生活です。
ある人は、冬にバイトをしてお金を稼ぐ。(例、工場の門番の場合、一ヶ月1000)




Q,どのようにして同じ村の中で格差が出てくるのか。

親戚への挨拶回り(拜年)の時に、様々な家に入りました。フローリングがしっかりしてる家もあれば、家の中が外の地面と変わらないような家もある。部屋にエアコンがあるところがあれば、電気さえないところもある。
どうして、こういう状況が起こるのか不思議だった。大体同じ土地で同じ物を作れば、収入も大体同じなんじゃないかなーと思っていたので。


A,実際のところは、世帯ごとの土地の広さも作るものも異なります。だから、生産量も質も違ってくる。
一般的に収穫の時期に、卸売り市場に持っていって一度に多くの金額を稼ぎます。


僕が訪問した地域はリンゴで有名な烟台(yantai)、リンゴだけで約2万元(30万円)稼ぎます。その土地で取れた他の農作物(小麦、とうもろこし、落花生、大豆等)は売らないで、自分の家で食べるように使う1年間。




Q,経済発展の利益を享受できているのか?それとも、生活コストが上がり、苦しくなったのか?



A,もちろん物質面での豊かさは享受している(テレビ、暖房など)。しかし、給料はそこまで変わらないわりに、コストが急激に上がっている。


例えば、春節の時の費用。
10年前は500元〜1000元で済んだのに、今では約4000元の出費になっている。理由は、肉類の急激な高騰。10年前に比べて、3,4倍に上がったと言われてる。
理髪店では、10年前では1元か2元だったのに、今では10(140円)かかる。(それでも日本に比べたら異常な値段だけど)

もう一つ急激な物価上昇を表す例が、リフォーム。
同じ内容のリフォームをするのに、2年前では15000元、それが今では20000かかる。2年間で5000(6万円ちょい)の上昇。都市部でのマンション価格の上昇が問題になってるのはよく聞くけど、農村部でも住宅に関するコストが上がっている。

農民が享受しているもので一番良かったもの。
それは、2006年に農民税を払わなくて済むようになったこと。そして、今では政府から少しの援助が出る(具体的には不明)


税金は、比較的お金のない農民にとっては大きな負担だし、モチベーションを下げる大きな一因だった。この政策だけで、多くの農民が政府に対して満足するようになったかもしれない。





Q,これからの農村はどうなるか?

A,一番大きな問題は「後継者不足」。
中国の農村では、春節の時以外に2030代の若者はあまり見ないという。というのも、農村での収入が低いので、都市に出稼ぎに行く人(農民工)が増えたため。


今の2030代の親が農業をできなくなったら、子供のいる都市にいって子供の子供()を世話するケースが多い。過疎化が進み、やがて村がひとつまたひとつと減り、都市の人口が増えて行く。


これは、日本の農村と似ている部分がある。例えば、私の祖父母の家は和歌山の田舎にある人口30人ほどの集落にある。その集落では、学校に通っている子供は既にいなくて、労働人口もほぼいない。ほとんどが60歳以上の老人。




以上、友達に質問した内容と結果でした。




中国の農業なんて今まで興味持ったことなかったけど、日本にとって意外と無視できない存在なのかもしれない。もともと「食」っていうのは人間が生きていく上で最低限のものだから考えなければいけないものだけど。


日本のスーパーに行ったら中国産の食品がたくさん売られている。需要があるから売られている。韓国の友達が、「韓国のスーパーの野菜なんか中国産ばっかだよ」って言っていた。


万が一、中国の農業がダメになったら、日本のスーパーに必ず影響が出るし、消費者の選択肢も減る。


今後どうなっていくかわからないけど、知らなきゃいけないと思った。
おそらく、でっかい企業が農地をどっさり買い取って大規模生産に変わっていってアメリカ型のシステムに近づいていくんだと思う。そうなると、今以上に安全問題っていうのが出てくるんだろうな。


「あ、こういう世界があるんだ」で終わらせないで、帰国後もっと理解を深めていきたい。





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